20日は奇形児のYASUさんのご命日だ……1年経つのが速いなぁ。
ということで、YASUさんのインタビューが載っているミニコミ誌を紹介。
画像だけだとYASUさんの発言が読めないので、今回もワードで打ってみました。
けっこう文字量が多く、老眼と指が疲れるので(笑)、2回に分けたいと思います。
ただ、YASUさんの好きなバンド(7文字分)がヌケているのが惜しい……。なんだろう?
YASUさんを偲ぶよすがにしていただければ幸いです。

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「巻頭インタビュー ヤス 奇形児→SISTERRAY1985年9月30at LOFT)」(『修羅』Vol.4198510月発行より)前編

 

§奇形児再結成後、2回のギグの感想を……

Y今日(9月30日)のはこの間(8月22日)よりは良かったんじゃないの?

§短期間の再結成だけど、その意義ときっかけは?

Y何となくじゃない? なんか1人1人思惑が違うんだけど、まぁやってみよう、と軽い気持ちで。

§次は?

Yもう奇形児はやらないと思うけど、みんなそれぞれのバンドで一生懸命やるでしょう。中には『再結成』って聞いて、これからずっとやると思った人いるみたいだし、そういう人には悪いと思うよ。演ってて…変な言い方だけど…やっぱり所詮、昔のバンドだよ。一度解散しちゃったから、その時点でパワーってのはなくなったと思うしね。冷めた見方したら、「今さら」ってあると思うんだよね。だから今、みんな自分達のバンド持ってんだから、それで奇形児より強力なパワーでやった方がいいんじゃない?

§仕掛け人はヤスさん?

Y直接的にはそうなる。俺とタツシ君が電話でしゃべってて、何となくそういう風になった。ヒマだったからじゃない、みんな。そう言うと悪いけど。確かに俺達が解散した後ってインディーズって盛り上がったけど、当時からすれば俺達もやってればどうなってたかなーってのはあったぜ、正直言って。それで今やってみたらどうかなって…そんなもんだね。

§では再結成後も含めて奇形児というバンドの総括を。

Y奇形児って、個人個人のバンドだったと思うのね。チームワークがないって言えばそれまでだけど、個人個人が自分のパートを持ち寄って、4人揃ったらこうなりましたって感じだね。前からそれはあった。いい悪いじゃなくて、割とみんな好きな事やってるね、各々。よく、バンドって音楽性の違いで解散する事あるけど、多少そういう事もあったけど、解散の理由の1つに俺とメンバーの究極的に目指しているところが違うってのがあったから。

§ヤスさんにとって奇形児とはどういう存在だったんですか?

Y俺はすごいバンドだった、ただ、先の先を考えると、こう…やっぱり目指している所が違うんだよね。ボーカリストって自分のエゴでバンドやってるみたいな部分あるでしょう? そういう他のメンバーから見ればやりづらくなるってあるしさ、冗談じゃないって事になるでしょ。

§ヤスさんの詞ってすごく自虐的なんですけど…。

Yヒガミっぽいんじゃないの、性格が(笑)。別に意識してる訳じゃないけど、『みんな、こうしようぜ、こうやろうぜ』って詞はあんまり好きじゃないし、書けないし。まぁさしさわりないっていうか…人の悪口言うより自分の事卑下してる分には割とみんなに攻撃されないじゃない。みんな自分に正直になった時って自分に自信がなかったりすると思うんだ。けど、それってあんまり表に出したがらないでしょう。俺がわざとらしい位『俺はダメなんだ』って曲を通して言う事によって、人間ってこういう部分があるって気がついてくれればいいかなって思うんだ。

§ヤスさんが東京離れてしばらく時間がたっているけど、その間、シーンや音楽に関して思う事ってありました?

Y別にたいした事考えてないよ。バンドやりたかったけど、田舎ってのは全然状況が違うから無理だしね。正直、キツイよね、東京のメンバーと…俺が基本的に向こうで生活やってくのは。でもできるだけやっていきたい。

§シーンの動きについては情報得たりしてますか?

Y時々友達から電話かかってきて聞くけど、あんまり興味ないね。人は人だから。たださっきも言ったけど、シーン全体が盛り上がってるのは確かだから、それはいい時期がきたんだなって思ったけどね。でも今、それを自分達の手で壊している気もするね。せっかくいい状況になったのに、それを自分達でダメにしていくっていうか…例えばさ、レーベルにしてもちゃんとしたのもあるし、そうでもないのもあるっていうか。あとバンドなんかもメジャーに行く事に振り回されちゃって、メジャー行った途端、つまんなくなったってあるじゃない。ヒガミもあんのかもしんないけど…他人がとやかく言う事じゃないけど。インディーズの中で、この状況を盛り上げていこうってバンドがあってもいいんじゃないかと思うんだけど、メジャーに行きたくて、単なるその足がかりとしてインディーズやってんのかもしんないけど…でもさ、するとつまんなくなっちゃうでしょ、予備校みたいで。インディーズそのものがもっとイキイキしてた方が面白いよ。メジャーと同レベルで肩を並べる位のシーンにならないもんかなと思うよ。結局いい所まで行くとメジャー行っちゃってさ、行った割にはパッとしなくて…それじゃつまんない。メジャーのためにバンド育ててるみたいなもんでしょ。あくまでメジャーはメジャー、インディーズはインディーズでやっていけるようなシーン、気力みたいなのが欲しいと思う。

§新しいバンド、シスター・レイについての説明を…

Yシスター・レイはまだギグやってないし、練習1回位しかやってないんだけど、俺【7文字分ヌケ】が好きでそういうバンドになりたい。あくまでもボーカリストとしての俺個人の考えなんだけど。奇形児とは違ったバンドにしたいと思うね。もう少しNYパンク…ちょっと古い言葉だけど、ああいうバンドになりたいね。音楽性そのものよりもビジネス的な事や哲学的な事をロックバンドという形態を通してやってるって言うか…身分不相応な事言わせてもらえば…“詩人”になれたらいいなって思うね。どれだけ俺の考えが通じるかわかんないけど。

§オムニバスの為にレコーディングした2曲について…【ZOLGELOODSIKARIなどが収録されている『REBEL BRAIN FACTORY』(R.B.F./1985)のこと】

Y個人的にすごく好きな曲だからみんなに聴いて欲しいんだ。特に『ひとりぼっちの世界』って曲は悪口みたいに言っちゃえば10年位前の古臭い音だから、今のハードコアとか好きな人達には受け入れられないかもしれないな。やってる側があんまり陶酔しちゃいけないんだけど…逆に新鮮かなって思ったりもする。みんな毛嫌いしないで何でも聴いてもらいたい。究極的にロックなんて日本のモンじゃないし、いろんなところから借りたモンだから、別にパンクとは何だとかカテゴリーにとらわれて気取ったってしょうがないでしょ。嫌いなモンを無理に好きになれとは言わないけど、幅広く柔軟な考えでやってもらいたいし、受け止めてもらいたい。

【次回へ続く】